2013年12月6日金曜日

ビジュアルで考えること(その3)

シリーズ「ビジュアルで考えること」
その1 なぜ必要か? > その2 何ができる? > その3 創造現場の今)



先日、ブレインストーミングの内容を“ビジュアライズする”ことを目的としたワークショップが開催されました。第8回WebUX研究会 リアルタイムドキュメンテーション ワークショップ 〜創造現場における記録と解釈の可能性を探る〜 2013年11月30日)
ブレストの結果を絵として書くのではなく、ブレストの過程や考え方のポイントを書き出すワークショップです。

土曜日の昼間、13時から5時間にもわたるワークショップでしたが、さまざまな業界からクリエイター、デザイナー、プランナー、プログラマーなど、多くの方が集まりました。





記録の仕方からファシリテーションを考える

ワークショップでは1チームを2つに分け、半分はブレインストーミング、半分はその様子を観察しながら記録するという内容で実施されました。

ブレインストーミングのノウハウよりも、そこで話し合われたポイントを掴みとる方法、テーマにフォーカスしつづける方法を、全チームが真剣に考え、試行錯誤する場となりました。



あるチームは、メモをとる係とメモをボードに構造化する係を分担化し、その作業工程をチーム全員が見えるような場所づくりをしていきました。テーブルはV字型になりました。
また、あるチームは、時間の流れに沿ってメモしていた記録ボードを途中で壊し、発話の内容でボード空間を再構成しなおすことで、主題を導き出しました。
また、あるチームは、ブレストのメンバーの中に、グラフィックファシリテーターの役割を入れて、要所要所で、そのグラフィックを振り返りながら、対話を進めていきました。


創造現場の課題と変化する意識

なぜ参加者は、ここまで工夫することができたのか?
話しを伺ってみると、普段からブレインストーミングなどの会議で、うまくいかない経験をされていることがわかりました。次のような課題が挙がります。

◯議論している内容/構造を客観的に把握できていない
◯議論が必要な時 ファシリテーター(または、そのような役割の人)がいない
◯ブレストの内容を即座にスケッチできる人は少ない(デザイナーでも)
◯言葉で納得しても、ぜんぜん違う内容として理解されることがある

だからこそ、このように、ビジュアライズの方法やファシリテーションに興味を持つ人が増えているのだと思います。

また、このような課題を意識する背景には、創造的プロセスが少しずつ変化していることが影響しているのではないかと思います。
決まったものを正確につくるというやり方ではなく、つくりながら良いものを模索するやり方へと変わりつつある、創造プロセスの変化。時代に合わせて、変わらなくてはいけないと、現場レベルで気づきはじめているからではないでしょうか。

イノベーティブな創造プロセスでは、「ゴールを決めず」「直感を大事にし」「多様なメンバーで」行うことが良いと言われています。
しかしそれは、「暗闇の中で」「一瞬のきらめきを」「価値観の異なるメンバー」と掴みとることでもあります。




◯ゴールを決めずに暗闇の中を模索するからこそ、これまでの経緯を客観的に把握したい
◯直感的にやってくるアイデアだからこそ、その一瞬を逃さず掴みたい
◯多様なメンバーで語り合うからこそ、言葉の意味を確実に理解したい


だからこそ、ビジュアライズが必要になってきているのです。






シリーズ「ビジュアルで考えること」
その1 なぜ必要か? > その2 何ができる? > その3 創造現場の今)